高専からの東工大編入のおはなし

H31年度東工大編入記 電通大と京都工繊についてもあるよ

東京工業大学編入体験談

前回の投稿からめっっっちゃ時間がたって卒研が終わったり高専生活が終わったりしたので書き残してきた東工大編入体験談を書いていきます.

春休みに入ったので進学組はそろそろ本腰入れて勉強を始める頃でしょうかねー

 

 

この記事のコンテンツは以下の通り

 

 

東京工業大学について

東京工業大学高専生ならば言わずと知れた科学技術系の強い大学です.でも知名度は信じられないほど低いです.今のところ東工大といってピンと来てくれた人は高専以外では片手に数える程度です.キャンパスは東京都目黒区の端っこにあり,最寄り駅は大岡山駅です.駅を出て交差点を渡るとすぐ大学なのでアクセスの良さは神です.あと図書館がなんかめっちゃおしゃれでした.

 

受験前日に下見をして,せっかくなので写真を撮ってきました.

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東工大の本館です.東大の安田講堂的な.登録有形文化財だそうです.青空に映えそうなのですがあいにくの曇り空です.でも気温は高く暑くて死ぬかと思いました.東京の暑さはつらいです.

 

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例の図書館.曇ってるとあんまりきれいに見えないですが僕はすごくテンションが上がりました.

 

東京工業大学攻略

東工大は数物化英の4教科+面接と,他のほとんどの大学よりも多くの範囲が出題されるので,とにかく早く勉強を始めないと間に合わなくなります.特に化学は大学化学が出題されるので早めに何とかしないと詰みます.まだ何もやっていない人はすぐに化学の先生の所に行って化学を教えてもらいましょう.この化学と,東工大特有の英語の超長文に対抗できるかが合格を左右します.

 

数学攻略

東工大の数学は,毎年かなり傾向が決まっています.毎年大問が4つ出題され,最初の2問が行列,その次が偏微分,最後が重積分です.全体的にめちゃくちゃ難しいとかは無く,むしろ他の科目に比べればかなり余裕があります(≠楽).試験時間も120分もあるのでここで落とすとかなり痛いんじゃないかなとおもいます.

行列では,特に出やすいものが未知数を含んだ連立方程式の問題と対角化の問題です.行列では毎年あまり発想力を試される問題は出されていないのですが,純粋に計算がめんどうです.たぶん時間が余ると思うので時間が許す限り何度も解きなおしましょう.特に対角化では以下のような性質があるので見直しに使いましょう

・行列Aの全ての固有値detAに等しい

・行列Aの全ての固有値trAに等しい

偏微分は主に2変数関数の極値や条件付き極地の問題が出やすいです.ですが,チェインルールが出ている年もあるのでこの辺りは全体的にやっておいた方がいいと思います.特に厄介なのが条件付き極地問題です.高専で習うようなやり方では到底太刀打ちできないし問題集にもあんまり載っていないです.これに関しては「大学編入のための数学問題集」という本にわかりやすい解き方があります.詳しくは「勉強について」の記事を参照.

積分は,ふつうの2変数のものや変数変換をするものが1~2問出ています.これはそれほど難しいものではないので,いろいろな変数変換のパターンを知っていれば特別な対策は必要ないでしょう.

 

物理攻略

東工大の物理は強いです.純粋に問題が難しいです.問題構成は電通大と同じく,1問目に力学,2問目に電磁気学,3問目に熱力学or波動が出題されます.全体的に傾向というものはないような気がします.強いて言うならば力学は慣性モーメントや微分方程式を用いる問題が出やすく,電磁気学は電磁誘導の問題が出やすいように感じます.熱と波動は熱:波動=2:1くらいの割合で出ているような気がしますが,最近は3年連続熱力が出てるのでもうわかりません.問題のレベルも様々で,問題集でやった問題がそのまま出るなんてことはまず無いのではないかと思います.お覚悟を.黄色い本を中心にとにかく多くの問題をこなして問題の本質をつかむことができるようになりましょう.試験本番では簡単なものから難しいものまで出題されるので,問題の難易度を見極めて難しすぎる問題を数問捨てるのも手かもしれません.

 

化学攻略

東工大の化学は高校化学+大学化学です.比率は1:2で大学の方が多いような感じです.大問は全部で6問あり,4問が無機化学,残りが有機化学です.範囲はめちゃくちゃ広く,元素や酸・塩基から有機化学まで何でもありです.しかし有機化学は毎年出る範囲がある程度決まっているので,勉強すれば安定して点が取れるようになります.化学の先生に聞いたり,マクマリーや有機化学演習を使って有機化学を得点源にしましょう.無機化学は高校用の問題集を使ったりしてがんばってください.最近は高校分野からの出題が多くなっているので,知識を問う問題にも答えられるようになっておくと安心です.

 

英語攻略

東工大の英語はとにかく長く難しい(1つの長文が4~5ページ(!!?!?)くらいのが2つ+割と長い英作)ため,日常から英語に触れるようにして速読力や英作力を鍛えておくといいでしょう.僕は図書館の英語の科学雑誌(Scientific American)を読んだり,高校生用の東工大入試の英語の模試(通称青本 amazonで中古70円)をやったりしてました.東工大編入試験の英語は、普通の大学受験の英語の試験問題と似ているので,本番の時間感覚をつかむことができると思います.そして過去問を見たことがある人はわかるかもしれませんが,東工大の英語は全文を読まないと回答できない問題が多いです.斜め読みしていると高確率でわからなくなるので,全文を時間内に読めるような速読力をつけましょう.

 

受験当日

1日目

 1日目は数物化のテストがありました.

まず数学.例年と同じく行列が2つと2変数関数の極値,最後に重積分でした.例年よりも易化したようでどれもそれほど難しくはなく,40分程度で終わったので逆に不安でした.5回近く見直しをしたと思います.人生でこんなに見直しをしたのは今回が初めてだと思うくらい見直ししました.

 

次に物理.1問目に水素分子(H-H,H-D,D-D D:重水素)のばねモデルについて,それぞれの慣性モーメントの比を求めたり,振動の周期の比を求めたりするものが出ました.こんな問題は始めてみました.2問目は電磁気で,帯電した同心球殻の電界と電位を求めるもの,有限長導線から距離hだけ離れた点の磁束密度を求めるもの,四角形コイルを磁界中で回転させたときの起電力と流れる電流の微分方程式を求める問題でした.特に最後の問題は見たことがない問題でしたが,電磁誘導の定義をたどっていくと答えが出てきました.3問目は熱力で,カルノーサイクルとディーゼルサイクルのpV図とTS図,仕事や効率などの問題でした.もうとにかく時間がなかったです.そして問題も本質を突いてくるものが多いような気がしました.

 

最後に化学.1問目は電気分解,2問目は酸塩基と解離定数,3問目は混成軌道・熱化学方程式・熱平衡,4問目は熱力学の用語問題・エンタルピーを用いた計算,5,6問目に有機化学でした。例年通り様々な問題が出題されていました.特に今年は有機化学で”アルドール縮合”という割と難しい反応が出題され,これが解けないと後に続く問題が解けないという鬼畜問題がありました.東工大はこのように難しい反応でも普通に出してくるので,できるだけ覚えるようにしておきましょう.詳しくはマクマリーとか見てください.

 

2日目

2日目は英語と面接でした.

英語は超長文×2+120字程度の自由英作文でした.1つ目の長文は「脳をコンピュータにつなげるのは非現実的ではない~」みたいな内容で,2つめは「エンジニアの生産性~」みたいな内容でした.この2つだけもかなりお腹いっぱいなのに,さらに120字程度の英作文もあり,終わったのは試験終了3分前くらいでした.超ギリギリです.ぶっつけ本番でやるとたぶん死にます.必ず過去問か赤本か青本をやって東工大の英語の時間感覚を掴むようにしておきましょう.

 

そして面接です.僕は東工大では専門科目について何か聞かれるようなことはないと思っていたのですが,普通に口頭試問をされて心臓が止まるかと思いました.なんとか脳をフル回転させて答えられましたがめちゃくちゃ動揺しました.面接時間は1人当たり10分前後で聞かれた内容は以下の通り.

・簡単な志望動機

・卒業研究の内容+質問

・試験の出来

・専門科目についての口頭試問


この口頭試問ですが,まず数学のラプラス変換の専門への応用と,ラプラス変換フーリエ変換の意味の違いについて聞かれました.そして僕は電気電子系を受けたので,電子回路のコレクタ接地回路の特徴や電圧増幅率,使用用途などを聞かれました.

僕は体験談を読んだりして,面接ではTOEICの点数や得意不得意教科などが聞かれると思っていたのですが全然違くて焦りました.面接は系ごとに行うので,もしかしたら口頭試問があるのは電気電子系だけなのかも.

という感じで東工大の面接は何があるかわからないです.実際に僕は体験談や聞いていた話とは全く違いました.受験者の真の基礎力や授業への関心などが試されているのだと思います.授業をちゃんと聞きましょう.

 

おわりに

うかりました.いぇーい.東工大を受ける人は他の人が次々決まっていく中で夏休みも半分費やして孤独な戦いを続けなければなりません.つらいです.心を病まないようにしましょう.実際に僕は割と心が荒んでいきました.あと東工大は化学と英語でかなり差が付くと思います.化学と英語が合格を決めるといっても過言ではないと思います.決して化学を捨てるというような愚行に走らないように.僕からは以上です.それと東工大を受ける人は旗の台の東横インがいい感じでおすすめです.

p.s. 東京(+近郊)の家賃って高いんだね...